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ようこそいらっしゃいました。 ここは”のこ”による、「魔術士オーフェンはぐれ旅」の感想、妄想、二次創作ブログです。 公式とは一切関係がありません。
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明けましておめでとうございます!
師弟にほわほわと萌えるサイトにようこそ。

ついでに、ほわほわ気味の小話をどうぞ。
つづきに収納されてます。



Take it easy……on me.


明るい日差しに建物の白さが映えている。
その眩しさに青年ーーーーーーマジク・リンは目を細めた。

建物の並びは少々まばらではあるものの、
流石に5年も経てば港町としてそれなりの姿にはなるものだ。
もちろん、様々な障害は依然彼らの目の前に鎮座しており、それに対する心配や不安は決してなくなる訳ではないが、青年が想像していたよりもその発展のスピードは早い。
ただの開拓ではなく、『新大陸を開拓する』という勢いも手伝っているのかもしれない。

より困難な事態に立ち向かう時こそ発揮される人の力というものだろうか。

人間は先がわからない、未来への不安はいつだってある。
揺らぎ続ける、不安定だ。
けれど、決して絶望しない。

それがたぶん人の強さだ。

青年からすれば、そんな強さをある意味体現していると言える元師匠、
魔王オーフェンがめずらしく頬の筋肉を緩めていた。
いや、締めようとしているのだが、自然とほころんでしまう、そんな風に見えた。
こちらの視線に気がついたのか、オーフェンが口を開いた。

「なんだよマジク、変な顔して」
「いやー」
「なんだ」

と眼を眇めつつこちらに聞いて来る、その顔が若干にやけている。

「…顔緩んでますよ」
「ぉお!?」

まあ無理もない。
もうすぐ彼の3人目の子どもが生まれるのだ。

「もうすぐですしね、クリーオウ」
「ああ、そだな」
「結構あっさりですね」
「まあ、3人目だしなあ」

1人目、2人目のときより、確かに「慣れ」というものは感じられた。
だが、嬉しいのだろう。
本人には自覚はないだろうが1人増えるたびに人当たりが穏やかになっている。
…むろん、敵ではないものに対して、ではあるが。

ちなみに何故男2人してこんな昼日中から町中を闊歩しているかといえば、
身重の彼の妻、クリーオウに買い物を言いつけられたからだ。
マジク自身にとって、フィンランディ一家はこの新大陸において唯一の身内みたいなものなので
頼まれごとを片付けることに抵抗はない。
一家の家長たる男よりもこちらの荷物が多いのは納得いかないが。
最近語彙が富みに増えた彼らの長女には
『おじさんーそれはぱしりせーしんっていうんですよー』と評された。
まあ、否定はしない。
残念ながら、できない。

こちらよりも若干体格は良いくせに、少なめの荷物しか持っていない一家の家長は
照れたように頭をかきながら、意外な事を言った。

「それもあるんだけどな」
「はぁ」

どうやら別の事情もあったらしい。
聞かせたい様なので、そのまま耳を傾ける。

「いや、な。昨日俺は娘を持つ父親の醍醐味ってやつをちょっとばっかし味わったんだよな」
「へえ、どうしたんです?」

険相の似合う黒魔術士が、がらにもなく顔をほころばせて語ったところはこうだ。



ーーーーーーー昨日夕方のことらしい。

彼の次女、エッジが突然走りよって来てこういったそうだ。
半べそで。

『パパ!あたしパパのお嫁さんになれないの!?』

思わずマジクは吹き出しそうになった。
微笑ましさからではなく、ある理由からである。
そんな青年の反応には気付かなかったのだろう。
魔王は嬉しそうに語り続ける。

「いやー、いつかそういうことも言われるだろうとは思ってたんだけどな
実際、あいつらが成長してるってのが分かると思いのほか嬉しいもんだよな」
「そうなんでしょうねえ…。あ、僕には全然わかりませんけど!」
「…?どした?」
「いや、ほら、僕は父親になったことないんで」
「そりゃそうか」
(……父親にはなったことないんですけどね)

青年は半ば悟りを開いた様な遠い目になりながら想いを馳せる。


あれはそうーーーーーーーちょうど一年ほど前だっただろうか。

犬の散歩とは名ばかりの、犬に引きずられるだけの過酷な道程を終え、
マジクがフィンランディ家の玄関先に座り込んでいたときの事だった。

後ろからぽやぽやとした気配が近づいてくる。
フィンランディ家長女、ラッツベインだ。
マジクが名付け親になり損ねた少女でもある。

少女はあっけらかんとマジクに問うた。

「マジクおじさんはおよめさんいないの?」

他意はない、たぶん。
バカにしようとも思っていない。
ただ不思議そうに彼女は問うた。
マジクも淡々と………答えたつもりが少々つられて間延びした。
いつも何となく少女のペースにつられるのだ。

「いないねえ」
「こいびとは?」
「…いないねー」
「やっぱり、おかーさんがいってたとーりなんだー」

やったぁとばかりに明るい声を上げる少女とは裏腹にマジクの思考は少しだけ暗黒面に傾いた。
泣いちゃおうかな、と。

「あー」

なんだか妙に虚しくなって心の中でひっそりと涙でも流そうかと思っていたら、
突然ぽんと頭に手が置かれた。
そしてその小さな手はさわさわと彼の頭を撫でた。

「よしよし」
「………」
「よし!」

最後のよし!のひと撫ではちょっと痛かった。
なでなでを終えた彼女はずずいっとマジク顔を覗き込んで宣言した。

「おっきくなってもおよめさんができなかったら、わたしがおよめさんになりますねー」

おっきくなっても、というのは少女自身のことだろう。
可愛らしい少女の戯言だ。
マジクものんびりと返す。

「はは、期待しないで待ってるよ」
「まってちゃだめですよーう」
「まあ、見つかるように努力はしてみるよ」
「はいー」

両者がのんびり微笑み合って、会話は終了した。
少女も満足したのか意気揚々とーーーのつもりなのだろうが見かけ上はほえほえとーーー踵を返そうとしたとき、彼は気付いてしまった。

事の重大さに。

顔からさーっと血の気が引いたのが分かる。
一瞬くらりとしかけたがそんなことには構っていられない
去りかけていた少女の両肩をがっしとつかんで
その顔をしっかり覗き込む。

「ほえっ!?」

そうして彼は真剣に、慎重に編んだ魔術の構成を実行に移すときの様に言葉を紡いだ。
その慎重さは疑似空間転移を試みるがごとくだ。

「これは、君と僕の秘密だ。ラッツベイン」

異様な(自覚はしている)真剣さに気圧されたのかラッツベインは目をまんまるに見開いて
マジクを見つめている。

「ひみつですかぁ」
「そう、2人だけの秘密だ」
「??」

彼女は不思議そうに首をひねりつつも頷いてくれた。

「はあ、いいですけど」

わずか4歳の幼女の目の前で真剣に秘密だと語る成人男性。
端から見れば怪しい事この上ないが彼は必死だった。

(……………命がかかってる、必死にもなるさ)

だってそうだろう。
誰だって、魔王の魔術に自ら晒されたいと思う人間はいないはずだから。




そんな青年の回想などつゆ知らず。
件の少女の父親である魔王はさきほどよりも頬を緩ませながら愛想良く語る。

「いやー、実際はエッジよりラッツベインあたりが言うんじゃないかと思ってたんだけどな」
「はぁ」
(ごめんなさい、ごめんなさい、一年も前に醍醐味味わってすみません)
「あいつの方が案外エッジより幼いのかもしれないな」
「はぁ、そんなことはないと思いますけど」
(大丈夫きちんと育ってます、2人ともきっちりばっちり育ってますから!)

のんびり語る元師匠の横で、マジクは顔を引きつらせて曖昧な相づちを打つことしかできなかった。
彼はそのまま心の中で平身低頭謝り続ける。

(ごめんなさい、すみません、別に他意があったわけじゃないんです)
(っていうかある訳ないじゃないか)
相手は自分年齢の半分も生きていない小さな少女だ。
(ああ、でも結局言えずじまいでごめんなさい、すみません)
(………)

微睡みの中必死でそんな事を考えて。
……微睡み?

(ああ、昔の夢か)

自身の現実にようやく思い至る。
そして柔らかなベッドの中で味わう気持ちのいい微睡みは、次の瞬間あっさりと打ち砕かれた。

「師匠!朝ですよー!絶好のお見合い日和です!」

魔術士としてよく鍛えられた通りのいい声と共に部屋は光に満たされた。
カーテンが容赦なく開けられたのだ。

このまま溶け落ちそうな錯覚にかられるくらいにまぶしい。
そんな強烈な光を背にして元気良く飛び跳ねる影が一つ。

「………ラッツベイン」
「はい!おはよーございます師匠ー。やっぱりまだ寝てましたね。だめですよー」
「あー…そっか今日は見合いなんだっけ」

昔の、しかもあんな夢を見たのはそのせいか。

「ですよーう。きっと寝過ごすんじゃないかと思って、
母さんの作ってくれたご飯を持って来たから、朝ご飯はばっちりですよー」
「…行かなくちゃだめかなあ」
「だめですー」

ちっこい頃にお嫁さん宣言をしてくれた弟子はそんなことはすっかり忘れ、
立派に育って師匠の見合いの付き添いまでこなす、まあそれなりにしっかり者の娘さんだ。

「師匠ー!ごはん冷めちゃいますよー」

彼が伸びをするわずかな間に階段を駆け下りて行った元気いっぱいの少女の声が
階下から聞こえる。

「ま、そんなもんだ」

誰にともつかない呟きを苦笑と共に漏らしながら、マジクは部屋を後にした。





尻切れとんぼですが、まあそんな感じで。
エッジの「お嫁さんになる!」発言はオーフェンだと疑っていないのですが、
ラッツベインの「お嫁さんになるー!」発言はマジクであって欲しいと願ってます(笑)。

読んでいただいてありがとうございました!

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のこ
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自己紹介:
年季の入ったガノタ。ありとあらゆるガ/ン/ダ/ム/にハマるバンナムに搾取され続ける人種。ファルコムオタ。
「オーフェン」はリアルタイムで追っていたのにBOXのせいで今更ながらに心を射抜かれ、見事に師弟とブラディ・バース関連に心奪われた!
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